獣医疫学会について

ご挨拶
2025年度獣医疫学会総会(2025年3月)において筒井前会長の後任として会長に就任いたしました。大任を拝命して身の引き締まる思いです。本会のさらなる発展に向けて力を尽くしていきたいと考えておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。
「獣医疫学 - 基礎から応用まで - <第三版>」が獣医疫学会の編集によって刊行されて多くの獣医系学部で教科書に採用されることにより、本会が疫学の普及と発展に貢献してきたことは衆目の一致するところと思います。また、パブリックの健康につながる公衆衛生対策や動物衛生対策の科学的な基盤を支える実践的な学問体系としてとして疫学を駆使することで社会のさまざまな要請に応えていくことも期待されていると考えます。
本会は1997年に設立されてから多くの先達や会員のみなさまに支えられて発展をしてきました。獣医疫学の応用範囲は、獣医学や農学、医学や環境学の領域にとどまらず、人や動物の集団が関わるさまざまなフィールドでの社会行動や福祉、農林水産業等につながる経済活動、野生動物の保全、さらにはゲノムや生体情報などをあつかうデータサイエンスなどの分野にまで幅広く広がっています。多様な領域間でのワンヘルス連携による新しい視点でのパブリックの健康増進が期待されます。また、ズーノーシス(人獣共通感染症)や薬剤耐性問題にみられる種を越えた原因微生物の伝播や流行拡大の機序解明につながる疫学、農林水産業を起点とする6次・7次産業の課題を多次元の時空間で解析する疫学、さらには近年発展が著しい数理モデルやAI、ICTの技術を駆使した最新の疫学を実践してその成果を社会に実装するためには、学際的なアプローチがとても大切であることがよく理解できます。
なんと魅力的な(実践)疫学なのでしょうか。さまざまな領域を越境して、命ある生き物の個体から集団における健康や疾病、その背景(生態~環境~社会~経済等)に係る事象や事例について、本会での情報交換・成果発表・疫学手法の研鑽を利用しながらともに疫学してみませんか?!
パブリック(公共)の視座で人や動物等の個体から集団、その社会構造について、他分野とのワンヘルスアプローチで得られるさまざまな学問知と実践知を、本会の学術、組織強化、情報配信、国際・教育・連携、編集の活動を通して、どのように社会に応用・実装していくのか、みなさまといっしょに考える機会をもつことができればと考えています。
引き続きのご支援とご協力を賜りますようどうぞ宜しくお願いいたします。
獣医疫学会の目的と活動
獣医疫学会は獣医学とその関連領域における獣医疫学の研究・教育の進展と普及を目的として次の活動を行います。
- 機関誌として原著学術雑誌「獣医疫学雑誌」(当面年2回)を発行し、会員の獣医疫学に対する調査・研究成果の発表の場を提供いたします。また、獣医疫学に関する手法等の解説や実践活動についての会員間の学術交流、提言等の場としても 活用します。
- シンポジウム、講演会、研究発表会を年1回以上開催します。
- 情報通信における獣医疫学会のホ-ムペ-ジを開設し、会員相互間の情報交換を 行うとともに、機関誌文献、疫学情報のデ-タベ-ス化を推進します。
- 海外の獣医疫学関係の学会、集会および研究者等とも積極的な交流を図ります。
- その他、会員の要望に応じた疫学勉強会、統計・情報処理講習会、デ-タ解析相談なども随時行います。
沿革
設立および刊行物
- 1976年 獣医統計利用研究会の設立
- 1977年 学術雑誌「獣医科学と統計利用」の開始(~1985年)
- 1985年 「獣医応用統計学」(滝沢隆安)の刊行
- 1986年 学術雑誌「獣医科学と統計利用」の開始(~1997年)
- 1987年 獣医統計利用研究会から獣医情報研究会に改名
- 1997年 獣医疫学会の設立
- 1997年 学術雑誌「獣医疫学雑誌」の開始(~現在に至る)
- 2005年 「獣医疫学-基礎から応用まで-」<初版>(獣医疫学会 編)の刊行
- 2011年 「獣医疫学-基礎から応用まで-」<第ニ版>(獣医疫学会 編)の刊行
- 2012年 獣医疫学が獣医学教育コアカリキュラムの科目として採用
- 2016年 日韓獣医疫学合同シンポジウムの開催
- 2018年 設立10周年記念シンポジウムの開催
- 2022年 「獣医疫学-基礎から応用まで-」<第三版>(獣医疫学会 編)の刊行
国際交流(学術集会での講演等)
年 | 講演者 |
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2002年 | George Nasinyama(Makerere University) Dany Matthews(CVL)David Vose(David Vose Consultancy) |
2003年 | Marleen Wekell(FDA) |
2004年 | Adriano Aguzzi(University of Zurich) Stefan Roels(Veterinary and Agrochemical Research Center) Cristina Casalone(Instituto Zooprofilattico del Piemonte) Ulrich Kihm(University of Bermm) Jacque Grassi(CEA) Jiri Safer(University of California) |
2005年 | Katharina Staerk(Swiss Government) Dirk Pfeiffer(Royal Veterinary College University of London) |
2007年 | Ilaria Capua(Instituto Zooprofilattico del Venezia) Leslie Sims(Agriculture, Fisheries and Conservation Department) M.D.Salmon(Colorado State Suniversity) Ian Gardner(University of California) Katharina Staerk(Royal Veterinary College University of London) D.A.Daragtz(Colorado State University) Suwicha Kasemsuwan(Kasetsart University) |
2011年 | Gideon Bruckner (OIE) |
2012年 | Divid Swayne(USDA) Cristobal Zepeda(USDA) Torrence Wilson(USDA) |
2013年 | Marc Artois(VetAgro Sup) Katharina Staerk(Royal Veterinary College) |
2014年 | Divid Swayne(USDA) Cristobal Zepeda(USDA) |
2015年 | Michael Thrusfield(University of Edinburgh) Jose Sanchez-Vizcaino(University of Madrid Compultense) |
2016年 | Yong Myung Kang(Animal and Plant Quarantine Agency) Hachung Yoon(Animal and Plant Quarantine Agency) Han Sang Yoo(Seoul National University) |
2017年 | David Pemberton(Save the Tasmanian Devil Program Manager) |
2018年 | Clayton Johnson(Carthage Veterinary Service) Iria Noguerol(Eville & Jones Ltd.) Jon Stanford(Eville & Jones Ltd.) |
2022年 | Krishna Takhur(University of Prince Edward Island) |