第14回~感染症の疫学(その1)~

感染症の疫学に関する説明として,正しいものの組み合わせはどれか。

a. 原因となる病原体が特定できれば,感染症の疫学の目的はすべて達成される。
b. 病原巣は,生物体に加えて土壌等の周辺環境もなり得る。
c. 機械的伝播においては,病原体は媒介動物内で増殖しない。
d. 病原体の伝播経路のうち,空気感染は直接伝播の一つである。
e. 潜伏期は病原体に感染してから感染性を持つまでの期間を指す。


1. aとc   2. bとc   3. bとd   4. cとd   5. aとe

答えと解説

【答 え】  2.
a. 感染症の疫学の目的は,原因を究明してその予防・対策に役立てることである。
b. 正しい。
c. 正しい。
d. 空気感染は間接伝播の一様式である。
e. 感染してから感染性を持つまでの期間は,潜伏感染期である。潜伏期は病原体に感染してから症状が現れるまでの期間である。


【解 説】
  感染症の疫学は,疾病の発生頻度や分布などを観察し,原因を究明して予防・対策に役立てることを目的とする。そのため,病原体,感染経路,宿主の3つについて,またそれぞれの相互関係をよく理解しておく必要がある。
  感染や伝播のもととなるものを感染源と呼ぶ。また,病原体がそこで複製・増殖して生活環を形成し,伝播される状態になっている生物体や周辺環境を病原巣という。感染経路は直接伝播と間接伝播に大別されるが,前者には,直接接触,飛沫散布などが,後者には外界物感染,空気感染などが含まれる。さらに,初感染から二次感染までを解析することによって,その感染症の潜伏期間などを推定することができる。
  感染症の疫学についてのより詳細な説明や実例については,獣医疫学会編「獣医疫学─基礎から応用まで─〈第二版〉」(近代出版,ISBN978-4-87402-179-8)の118~141頁を参照されたい。

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