第5回~疫学の研究手法について~ その5

介入研究

以下は「介入研究」に関する説明である。正しい組み合わせはどれか。

a. 一般的に分析疫学の各研究手法に比べて因果関係の証明度合いは強い。
b. 研究仮説に合理性(この表現が少し硬いのでは?私が読んでいても、研究仮説の合理性?って何?って思ってしまいます。)が認められれば、研究対象の割付け(これも表現が難しすぎるような。処置群と対照群への割り振り、ぐらいではどうか?)は任意に行うことができる。
c. 対象集団を曝露/非曝露の2分類だけに分けて実施する。
d. 研究対象に対して介入以外の一切のコントロール(介入研究の中に、実験室内試験を入れた場合、実験動物は空気や餌、環境がコントロールされますよね?実験室内試験を疫学研究手法の中に入れない、という考え方もありますが・・・疫学実用ハンドブックでは一緒に並べて入れましたが・・・。また介入以外の一切のコントロール、という表現も少し分かりづらいのでは?)を行わない。
e. 手法が適正であれば、研究対象からの同意がなくても実施することができる。

1.aとc  2.bとe  3. cとd  4.aとd  5.該当なし

答えと解説

【答え】 4.
a. 正しい
b. 対象集団をいかに無作為に割り付るかが、介入研究結果の成否のポイントとなる。
c. 薬物の効果判定などでは、投与量を変化させるなどして介入を複数設定することもある。
d. 正しい
e. 何らかの介入を行う以上、研究対象(動物であればその所有者など)に対しての事前説明と自由意思による同意(インフォームドコンセント)は必須である。

【解 説】
 介入研究は、曝露要因の状況を変化させ、疾病等の発生や治療・予防効果などに影響があるかどうかを分析する疫学研究手法の一つである。記述疫学や分析疫学は研究実施者が研究対象に手を加えず、もっぱら観察のみに主眼を置くのに対し、介入研究では研究実施者自ら状況を変化させてその影響を観察していくため、因果関係の証明度合いは非常に高い。そのため、研究開始前のインフォームドコンセントは必須である。さらに、一般的に介入研究には大きなコストがかかる。したがって本手法は、記述疫学や種々の分析疫学によって十分検証された仮説の検証のために用いられることが多い。病院等で実施されている各種臨床試験などは介入研究の一タイプである。
通常、対象集団から、対照群と1つ以上の曝露群を抽出するが、これをいかに無作為に行うかによって、結果の信頼性が左右される(無作為割付)。また、介入研究では研究対象に対して研究仮説の要因への曝露/非曝露以外のコントロール(問題のdの表現を変えるのであれば、ここも書き方が変わってきます)は行わない。したがって、様々な異なる要因を持っている対象を分析していくことになることから、結果は多変量解析による分析を行うことが望ましい。

なお、介入研究のより詳細な説明や実例については、獣医疫学会編「獣医疫学-基礎から応用まで-」(近代出版、ISBN4-87402-108-5)の105~111頁を参照されたい。

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