第12回~スクリーニングについて(その1)~
疾病対策におけるスクリーニングに関する説明について,正しいものの組み合わせはどれか。
a. スクリーニングは疾病の確定診断のために実施される。
b. 疾病によっては,複数の検査を組み合わせてスクリーニングを行うことがある。
c. スクリーニングの結果は,感染の進行状況や,年齢などによって影響を受ける。
d. スクリーニングでは,用いる検査の精度が最も優先される。
e. スクリーニングで検査陽性となった個体は,すべて罹患個体と判断する。
1. aとc 2. bとc 3. bとd 4. cとd 5. aとe
答えと解説
【答 え】 2.
a. スクリーニングの目標は確定診断ではない。
b. 正しい。
c. 正しい。
d. 検査の精度がいかに高くても,操作が煩雑で平準化が難しかったり,コストがかかりすぎる場合,その検査はスクリーニングには採用されないこともある。
e. 検査陽性と罹患は必ずしも同義ではない。
【解 説】
疾病対策におけるスクリーニングは,見掛け上健康な集団の中から罹患の可能性の高い個体をふるい分けることであり,病原体の同定や病態像の確認に基づく確定診断とは異なる手段である。したがって,実施上の留意点として,1)簡便で安価な検査を用いる,2)実施手順が統一かつ平準化されている,3)上記のスクリーニングの意義が畜主に伝えられている,ことなどが挙げられる。
スクリーニングは疾病の早期摘発を目標に実施されることが多い。見逃されてしまうと社会的に大きな問題となる疾病(極めて伝播力が強い,発症すると予後不良,致死性の人獣共通感染症など)へのスクリーニングでは,疾病の摘発を優先し,ある程度の偽陽性を許容することもある。逆に,健康個体を誤って陽性と判定してしまわないように,複数の検査を段階的に組み合わせて実施することもある。検査の結果は,検査の精度のみならず,個体の生物学的条件(年齢,疾病の進行度,感染から経過時間など)や,検査試料の質(不適切な運搬・保存環境による試料の劣化,反応阻害物質の混入・不十分な処理対応など)によっても影響を受けることに留意しなければならない。
スクリーニングについてのより詳細な説明や実例については,獣医疫学会編「獣医疫学―基礎から応用まで―〈第二版〉」(近代出版,ISBN978⊖4⊖87402⊖179⊖8)の94~101頁を参照されたい。
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