第3回~疫学の研究手法について~ その3

症例対照研究

以下は「症例対照研究」に関する説明である。正しい組み合わせはどれか。

a. 対象疾病の有病率を算出することができる。
b. 評価の指標として、オッズ比がある。
c. 情報収集の時間的方向性から前向き研究とされている。
d. 曝露頻度が少ない要因の評価は、症例数が少ない疾病では困難である。
e. 調査対象となる個体や集団は研究開始時点で確定している必要がある。

1.aとc  2.bとd  3.bとcとe  4.aとdとe  5.該当なし

答えと解説

【答え】  2.
a. 有病率の算出ができるのは横断研究である。
b. 正しい。
c. 先に結果があり、過去を調査するので、後ろ向き研究である。
d. 正しい。
e. 確定している必要はない。調査期間中に症例、対照の数を収集していく方法もある。
【解 説】
 症例対照研究とは、ある疾病に罹患した集団(症例)とその集団が所属する母集団から抽出されたその疾病に罹患していない集団(対照)を設定し、疑わしい要因(曝露要因)について症例集団、対象集団について調べ曝露要因と疾病との関連を評価する研究手法である。

 症例、対照の各集団は研究開始時に確定している場合もあれば、一定期間中に摘発された症例を積み重ねていくとともに、その都度対照についても設定していく方法もある。いずれにしても、疾病の有無という結果が先立ち、それぞれについて曝露要因についてのさかのぼり調査を実施していくので、時間的方向性としては後ろ向き研究となる。結果よりも前の要因を評価するため、横断研究よりは因果関係の証明度合いは強いと言える。ただし、要因に関する情報は過去のものであることから、正確に情報が得られないことがある(思い出しバイアスなどの存在)ので、注意が必要である。

症例対照研究においても症例の定義を正確に行うことが非常に重要である。さらに症例対照研究では、対照の設定の慎重に行う必要がある。病院対照、一般集団対照、近隣対照などがあり、それぞれ一長一短の特徴があるので、目的に応じて使い分ける。また、マッチングという手法を用いて、各症例の層(年齢、品種、性別など)に合わせた対照を抽出することにより、積極的に交絡の調整をすることもある。
 症例集団、対象集団に含まれるサンプル数は、最終的に要因の評価に耐えるだけの数が集まればよく、こういった研究の性質上、有病率といった疾病による汚染度合いの指標を算出することはできない。有病率の評価が可能なのは横断研究であり、また、横断研究にて推定されたリスク要因について症例対照研究、あるいはコホート研究で詳細に検証していくことも多い。また、要因内のカテゴリーの分布が一方に偏っている(極端に多い、あるいは少ないなど)場合は、症例、対照ともサンプル数を増やさないと評価できないことや、研究そのものが難しいこともある。

 症例対照研究における評価指標としては、オッズ比がある。これはコホート研究にて用いる指標のリスク比の近似値である。しばしば横断研究でも用いられるので、前回の本コーナーで解説したので本号での解説は割愛する。

 なお、症例対照研究のより詳細な説明や実例については、獣医疫学会編「獣医疫学-基礎から応用まで-」(近代出版、ISBN4-87402-108-5)の89~98頁を参照されたい。

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