第7回~疫学で用いられる指標について~

以下の疫学指標に関する説明について、正しいものの組み合わせはどれか。

a. 疫学指標は「割合・比・率」に大別されるが、このうち、割合は時間の概念を含む。
b. 発生率は、ある一時点で罹患している人や動物の、対象集団に占める割合のことを示す。
c. 発病率は食中毒発生時に活用される指標である。
d. オッズ比は症例対照研究において用いられる指標である。
e. 寄与リスクは、因子へ曝露した群としていない群それぞれにおける疾病等の発生頻度を、比で表したものである。

1.aとc  2.bとd  3. cとd  4.aとd  5.該当なし

答えと解説

【答え】 3.
a. 割合、比、率のうち、時間の概念を含むのは率である。
b. 発生率ではなく、有病率の説明である。
c. 正しい。
d. 正しい
e. 寄与リスクではなく、相対リスクの説明である。

【解 説】
 疫学指標は、集団における疾病発生等の頻度を示す指標であり、割合・比・率に大別される。割合は一時点の状況を、比は「男女比」など、異なる属性の集団の違いを、率は一定期間の状況を示す。ただし、本来「割合」を示している指標にもかかわらず、慣習的に「率」と呼ばれている指標もあり、それぞれの疫学指標が割合・比・率のどれに属するか、正確に理解しておく必要がある。例えば、有病率の定義は対象集団における一時点での有病頭数の割合なので、厳密には「有病割合」とすべきであるが、一般的には「有病率」という用語が定着している。発病率にも「率」という単語が使われているが、その分母は観察開始時点での感受性個体数であり、時間の概念を含まない指標といえる。一方、発生率については、「率」という単語が示すとおり、一定期間における新規に発生した罹患個体数を、その集団における各個体の観察期間の合計で除した、時間の概念を含む指標である。
問題に示した以外にも、リスク因子に対する曝露群、非曝露群への影響の評価に用いる指標として、相対リスク、寄与リスク割合等がある。

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